グローバルチャレンジ研修 i n S i n g a p o r e & T h a i l a n d
今年度の海外研修は「グローバルチャレンジ研修」と銘打ち、お盆休み前後の14日間、シンガポールとタイの2カ国に渡航しました。本プログラムは、情報工学部および情報工学専攻(大学院)で学ぶ学生たちを対象に、異文化や多様性を肌で実感し、新たな人生観や研究目標と出会い、各自のキャリアビジョン形成や語学力向上に繋がることを願い、2015年から継続している研修です。既に100名以上の派遣者たちが社会に巣立ち、それぞれに見出した道を活き活きと歩んでいます。今年も4月に派遣者を募集し、合計14名(学部生6名,大学院生8名)を選抜し、引率は田中敏光先生と川澄が担当しました。5月から事前研修を開始し、各国の歴史や文化や習慣などの学習、視察先の情報共有、英語プレゼンの準備などを順に行い、事前研修の仕上げは、シンガポールで視察予定のBLOCK71の日本拠点があるSTATION Ai(2024年11月開業のスタートアップ成長支援施設)のラウンジにて実施しました。
シンガポールは高度人材の獲得と育成に成功し、一人当たりのGDPが世界最高水準(日本の2倍以上)の先進国です。今回は、QS 大学ランキングアジア1位(世界8位)のシンガポール国立大学(NUS)、および、シンガポール経営大学の2校を訪問し、キャンパス視察や学生交流により、日本の教育環境との差異や、勤勉で貪欲な学生たちの姿勢に大いに刺激を受けました。
また、シンガポールはアジア最大のスタートアップハブであることから、アントレプレナーシップ(起業家精神)に関わる8つの講義を日本語と英語で聴講しました。講師は、AI、Web3、M&A、鉄道などの課題に携わる起業家や投資家の方々でした。BLOCK71(NUS運営のスタートアップ成長支援拠点)の空間で、挑戦する面白さ、人生や仕事の意義、日本人としての誇りなどに関し、心に響くフレーズを数多く受け取りました(図2)。

なお、滞在中の8月9日はシンガポール60周年の建国記念日で、Marina Bayの盛大な祝賀イベントで人々が感涙し、多民族国家が一つになる光景を目の当たりにしました。また、日本人墓地へ足を運び、シンガポールと日本人の歴史的な繋がりを知り、清掃ボランティアに参加できたのも貴重な体験でした。タイでは、キングモンクット工科大学ラートクラバン校(KMITL)とラジャマンガラ工科大学タニヤブリ校(RMUTT)の2校を訪問しました。KMITLでは、ビジネスとして大成功したローコード型AIプラットフォーム・CiRA COREが誕生した現場を視察し、開発者本人によるデモを交えた説明をお聴きし、ITエンジニアのいない工場や教育現場でAIを普及させるためのアイデアを理解しました。RMUTTでは、印刷実習(図3)、調理実習、舞踊実習など経験するとともに、交流会で出会った学生たちと6日間、飲食や観光をともにし、熱い友情を育みました(図4)。


また、ローカル企業として、タイサッカー1部リーグのBG Pathum Unitedと3部リーグのCustom Unitedを訪問し、最先端の設備やYouTube 配信会社の設立など、急成長中のスポーツビジネスの一旦を垣間見ることができました。その中で、選手や監督や運営者として日本人が活躍しタイの人材育成や地域貢献に真剣に向き合う姿に心を動かされました。日系企業の豊田合成アジア訪問では、工場見学に加えタイ人スタッフと交流する機会があり、また本学理工学部卒の駐在員もいたため、学生自らの現実的な5年後の一例として実感できました。

同じ熱帯ながら異なる成り立ちの2カ国を比較しながら滞在し、4大学の学生や多くの起業家との出会いにより、マインドセットや夢の描き方に大きな影響を受けた14日間でした。現地プログラム実施にあたり、情報工学部懇談会に経済的なご支援を賜り、心より感謝申し上げます。
注)本記事は、会報誌「ie-X」Vol.3に掲載された記事を転載しております。